生活保護がもらえる実際の金額は?計算方法と6つの受給条件や申請方法を解説
更新日:2024.04.26
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経済的な理由などで生活を続けることが困難な場合、生活保護を受けるという選択肢があります。
生活保護とは
- 最低限度の生活を保障し、自立を助長するための国の制度
- 対象者:資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する人
- 制度内容:生活費や家賃などの扶助(保護費)が支給される
生活保護を受ける場合、保護費としていくら受け取れるのか気になる人も多いでしょう。
実際の金額は住んでいる自治体や本人が置かれている状況などによって多少異なりますが、目安は以下のとおりです。
東京都区部等 | 地方郡部等 | |
高齢者単身世帯(68歳) | 77,980円 | 68,450円 |
高齢者夫婦世帯(68歳、65歳) | 122,460円 | 108,720円 |
母子世帯(30歳、4歳、2歳)※1 | 196,220円 | 174,800円 |
3人世帯(33歳、29歳、4歳)※1 | 164,860円 | 145,870円 |
障害・傷病者の場合 ※2 | 約94,000円 | - |
※1 児童養育加算等を含む
※2 大阪市(1級地-1)在住、身体障害者3級、一人暮らし、40歳の方を想定して試算
出典:厚生労働省「生活保護制度に関するQ&A」生活扶助基準額の例(令和5年10月1日現在)、大阪市「令和5年度生活保護基準額表 印刷」仕様書
子どもを養育している場合や障害者に該当する場合など、状況に応じて加算されるしくみになっています。
また、上記の「生活扶助」のほか、住宅扶助(家賃)や医療扶助(医療費)などもあります。
東京以外の大阪府や北海道における生活保護費の金額については、【世帯別】生活保護の受給額はいくらもらえるの?にて解説しています。
また、2023年10月には生活扶助の金額の改定がありました。
おもな改定内容は次のとおりです。
2023年10月のおもな改定内容
- 基準額の変更に伴い、世帯人員1人あたり月額1,000円を加算
- 現行の基準額から減額となる場合は、差額を保障
- あくまで2025年3月31日までの「臨時的・特例的な措置」
2024年度末までは、受け取れる金額が少なくなることはありません。以下のとおり、現状維持もしくは増額となります。
生活扶助基準額改定前後の比較世帯構成(世帯員の年齢) | 改正後の生活扶助基準額 | 改正前の生活扶助基準額 |
---|---|---|
高齢者単身世帯(65歳) | 76,880円 | 76,880円 |
高齢者夫婦世帯(65歳夫婦) | 120,900円 | 119,920円 |
母子世帯(30代親、子小学生) | 122,200円 | 121,970円 |
3人世帯(30歳夫婦、3〜5歳) | 152,900円 | 146,800円 |
障害者単身世帯(50代)※1 | 95,110円 | 95,110円 |
※改正後の基準額適用期間は令和5年10月1日~令和7年3月31日
※改正前の基準額適用期間は令和5年9月30日まで
※級地区分は「1級地―1」で記載
※「改正後の生活扶助基準額」は特例加算額と経過的加算額を含む基準額
※身体障害者3級、1級地に居住する該当者を想定して試算
出典:東京都品川区「令和5年10月からの生活保護基準の改定について」、厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和5年10月)」
この記事では、生活保護に関する知識・情報についてわかりやすくまとめています。
生活保護の対象となる条件・受給額の目安や計算方法・受給までの流れなどを紹介しますので、申請の前にしっかり把握しておきましょう。
生活保護で知っておきたいチェックポイント
- 生活保護においては「8つの扶助」が支給される
- 住んでいる地域や家族の人数・世帯構成に応じて、生活保護の受給額が加算される
- 生活保護受給中は新たにローン・クレジットカードを利用できない
- 生活保護受給中はケースワーカーが自宅に訪問し、生活状況をチェックされる
目次
- 1生活保護とは
- 1-1生活保護費の仕組み
- 2生活保護費を受け取る前に知っておきたい基礎知識
- 2-1最低生活費から収入を引いた額が生活保護として受け取れる
- 2-2生活保護は「8つの扶助」で最低限の保障を揃えている
- 2-3住んでいる地域や家族の人数・世帯構成に応じた加算
- 3【世帯別】生活保護の受給額はいくらもらえるの?
- 3-1高齢者の一人暮らし単身世帯の受給金額目安
- 3-2障害者・傷病者世帯の受給金額目安
- 3-3母子家庭世帯の受給金額目安
- 4生活保護の受給対象となる条件を解説
- 4-1受給条件その1「収入が厚生労働省の基準を下回っている」
- 4-2受給条件その2「家族に働ける人がいるなら原則として生活保護は認められない」
- 4-3受給条件その3「持ち家や車など活用できる資産を所有していない」
- 4-4受給条件その4「働いて収入を得ることができない」
- 4-5受給条件その5「国の制度を利用しても生活が難しい」
- 4-6受給条件その6「親族などからの支援が受けられない」
- 5生活保護の条件を満たすと受けられる保護
- 5-1世帯構成などの条件にあわせて生活保護費を受給できる
- 5-2入退院などでの医療費が無料になる
- 5-3出産や入進学などお金がかかるライフイベントは一時扶助が受けられる
- 6生活保護を受けるにあたっての注意点
- 6-1ケースワーカーが自宅に訪れ、生活保護受給者の生活状況をチェックする
- 6-2贅沢ができなくなる
- 6-3ローン・クレジットカードが組めなくなる
- 7生活保護を受けるための流れ・方法
- 7-11.生活保護の事前相談
- 7-22.生活保護の申請・調査
- 7-33.生活保護の決定
- 8生活保護の受給や財産の処分などに関するQ&A
生活保護とは
生活保護とは、さまざまな理由で生活が困窮している人に対して最低限の生活が送れるようにする保障制度です。
すべての国民が健康で、文化的な生活が送れるようにと、最低限の生活保障と自立を助けることを目的に制定されています。
日本国憲法(第25条)を根拠に生活保護法でも定められているのですが、基本的に対象となるのは「日本国民」です。
しかしながら永住者の在留資格を持つ外国人などは、人道上の理由などから生活保護法が準用されます。
生活保護はすべての国民が持っている権利のひとつなのです。
生活保護費の仕組み
上のイラストのとおり、生活保護は最低限度の生活を送るために必要な最低生活費と収入の差額を支給し、生活をサポートする制度です。
そのため、生活保護を受ける場合の保障・保護費はすべての人が一律ではなく、困窮の程度に応じて必要な保護が行われます。(なお、地域や家族構成などによっても生活保護費に違いがあります)。
「自分は生活保護とは無縁」と思う人が多いと思いますが、生活保護を必要とする可能性は誰にでもあるものです。
生活を送るのが困難なときには、現在住んでいる地域を管轄する福祉事務所、あるいは自治体の窓口で相談するとよいでしょう。
福祉事務所は全国各地に1,000ヶ所以上あります。
以下、参考までに東京都(23区内外)と、大阪府内にある福祉事務所の問い合わせ窓口(電話番号)を紹介します。
クリックしたら各問い合わせ一覧が確認できます。
東京都23区 福祉事務所問い合わせ一覧
千代田区 | TEL 3264-2111 |
---|---|
中央区 | TEL 3543-0211 |
港区芝地区 総合支所 | TEL 3578-3111 |
港区麻布地区 総合支所 | TEL 3583-4151 |
港区赤坂地区 総合支所 | TEL 5413-7011 |
港区高輪地区 総合支所 | TEL 5421-7611 |
港区芝浦港南地区 総合支所 | TEL 3456-4151 |
新宿区 | TEL 3209-1111 |
文京区 | TEL 3812-7111 |
台東区 | TEL 5246-1111 |
墨田区 | TEL 5608-1111 |
江東区(第一課) | TEL 3645-3101 |
江東区(第二課) | TEL 3637-2701 |
品川区 | TEL 3777-1111 |
目黒区 | TEL 3715-1111 |
大田区 (大森生活福祉課) | TEL 5764-0665 |
大田区 (調布生活福祉課) | TEL 3726-0791 |
大田区 (蒲田生活福祉課) | TEL 5713-1706 |
大田区 (糀谷・羽田生活福祉課) | TEL 3741-6521 |
世田谷区世田谷 | TEL 5432-1111 |
世田谷区北沢 | TEL 6804-7770 |
世田谷区玉川 | TEL 3702-1730 |
世田谷区砧 | TEL 3482-1343 |
世田谷区烏山 | TEL 3326-6111 |
渋谷区 | TEL 3463-1211 |
中野区 | TEL 3389-1111 |
杉並区 (高円寺事務所) | TEL 5306-2611 |
杉並区 (荻窪事務所) | TEL 3398-9104 |
杉並区 (高井戸事務所) | TEL 3332-7221 |
豊島区(生活福祉課) | TEL 3981-1826 |
豊島区(西部生活福祉課) | TEL 5917-5760 |
北区 | TEL 3908-1111 |
荒川区 | TEL 3802-3111 |
板橋区板橋 | TEL 3579-2322 |
板橋区赤塚 | TEL 3938-5126 |
板橋区志村 | TEL 3968-2331 |
練馬区練馬総合 | TEL 3993-1111 |
練馬区石神井総合 | TEL 5393-2801 |
練馬区光が丘総合 | TEL 5997-7713 |
練馬区大泉総合 | TEL 5905-5262 |
足立福祉事務所 (中部第一福祉課) | TEL 3880-5875 |
足立福祉事務所 (中部第二福祉課) | TEL 3880-5419 |
足立区 (千住福祉課) | TEL 3888-3142 |
足立区 (東部福祉課) | TEL 3605-7129 |
足立区 (西部福祉課) | TEL 3897-5013 |
足立区 (北部福祉課) | TEL 3883-6800 |
葛飾区(西生活課) | TEL 3695-1111 |
葛飾区(東生活課) | TEL 3607-2152 |
江戸川区(第一課) | TEL 5662-8169 |
江戸川区(第二課) | TEL 3657-7855 |
江戸川区(第三課) | TEL 5659-6610 |
東京都23区外 福祉事務所問い合わせ一覧
八王子市 | TEL 042-626-3111 |
---|---|
立川市 | TEL 042-523-2111 |
武蔵野市 | TEL 0422-51-5131 |
三鷹市 | TEL 0422-45-1151 |
青梅市 | TEL 0428-22-1111 |
府中市 | TEL 042-364-4111 |
昭島市 | TEL 042-544-5111 |
調布市 | TEL 042-481-7111 |
町田市 | TEL 042-722-3111 |
小金井市 | TEL 042-383-1111 |
小平市 | TEL 042-341-1211 |
日野市 | TEL 042-585-1111 |
東村山市 | TEL 042-393-5111 |
国分寺市 | TEL 042-325-0111 |
国立市 | TEL 042-576-2111 |
福生市 | TEL 042-551-1511 |
狛江市 | TEL 3430-1111 |
東大和市 | TEL 042-563-2111 |
清瀬市 | TEL 042-492-5111 |
東久留米市 | TEL 042-470-7777 |
武蔵村山市 (第一グループ) | TEL 042-565-1111 |
武蔵村山市 (第二グループ) | TEL 042-590-2230 |
多摩市 | TEL 042-375-8111 |
稲城市 | TEL 042-378-2111 |
羽村市 | TEL 042-555-1111 |
あきる野市 | TEL 042-558-1111 |
西東京市 | TEL 042-464-1311 |
西多摩 | TEL 0428-22-1165 |
大島支庁 | TEL 04992-2-4411 |
三宅支庁 | TEL 04994-2-1311 |
八丈支庁 | TEL 04996-2-1112 |
小笠原支庁 | TEL 04998-2-3230 |
大阪府福祉事務所問い合わせ一覧
池田子ども家庭センター | 072-752-6287 |
---|---|
岸和田子ども家庭センター | 072-445-3977(保護費の支払い事務、医療券等発送事務) |
072-430-4321(保護の決定事務) | |
富田林子ども家庭センター | 0721-25-1216 |
岸和田市福祉事務所 | 072-423-2121 |
池田市福祉事務所 | 072-752-1111 |
泉大津市社会福祉事務所 | 0725-33-1131 |
貝塚市福祉事務所 | 072-433-7031 |
守口市福祉事務所 | 06-6992-1221 |
茨木市福祉事務所 | 072-622-8121 |
泉佐野市福祉事務所 | 072-463-1212 |
富田林市福祉事務所 | 0721-25-1000 |
河内長野市福祉事務所 | 0721-53-1111 |
松原市福祉事務所 | 072-334-1550 |
大東市福祉事務所 | 072-872-2181 |
和泉市福祉事務所 | 0725-99-8134 |
箕面市福祉事務所 (箕面市総合保健福祉センター内) | 072-727-9536 |
柏原市福祉事務所 | 072-972-1501 |
羽曳野市福祉事務所 | 072-958-1111 |
門真市福祉事務所 | 06-6902-1231 |
摂津市福祉事務所 | 06-6383-1111 |
高石市福祉事務所 | 072-275-6284 |
藤井寺市福祉事務所 | 072-939-1111 |
泉南市福祉事務所 | 072-483-0001 |
四條畷市福祉事務所 | 072-877-2121 |
交野市福祉事務所 (交野市保健福祉総合センター内) | 072-893-6400 |
大阪狭山市福祉事務所 | 072-366-0011 |
阪南市福祉事務所 | 072-471-5678 |
島本町福祉事務所 | 075-961-5151 |
大阪市北区保健福祉センター | 06-6313-9872 |
大阪市都島区保健福祉センター | 06-6882-9872 |
大阪市福島区保健福祉センター | 06-6464-9872 |
大阪市此花区保健福祉センター | 06-6466-9872 |
大阪市中央区保健福祉センター | 06-6267-9872 |
大阪市西区保健福祉センター | 06-6532-9872 |
大阪市港区保健福祉センター | 06-6576-9872 |
大阪市大正区保健福祉センター | 06-4394-9872 |
大阪市天王寺区保健福祉センター | 06-6774-9872 |
大阪市浪速区保健福祉センター | 06-6647-9872 |
大阪市西淀川区保健福祉センター | 06-6478-9872 |
大阪市淀川区保健福祉センター | 06-6308-9872 |
大阪市東淀川区保健福祉センター | 06-4809-9873 |
大阪市東淀川区出張所 | 06-6322-0731 |
大阪市東成区保健福祉センター | 06-6977-9872 |
大阪市生野区保健福祉センター | 06-6715-9872 |
大阪市旭区保健福祉センター | 06-6957-9872 |
大阪市城東区保健福祉センター | 06-6930-9872 |
大阪市鶴見区保健福祉センター | 06-6915-9872 |
大阪市阿倍野区保健福祉センター | 06-6622-9872 |
大阪市住之江区保健福祉センター | 06-6682-9872 |
大阪市住吉区保健福祉センター | 06-6694-9872 |
大阪市東住吉区保健福祉センター | 06-4399-9872 |
大阪市平野区保健福祉センター | 06-4302-9872 |
大阪市西成区保健福祉センター | 06-6659-9872 |
大阪市西成区保健福祉センター分館 | 06-6649-4900 |
堺市堺保健福祉総合センター | 072-228-7498 |
堺市中保健福祉総合センター | 072-270-8191 |
堺市東保健福祉総合センター | 072-287-8110 |
堺市西保健福祉総合センター | 072-275-1911 |
堺市南保健福祉総合センター | 072-290-1810 |
堺市北保健福祉総合センター | 072-258-6751 |
堺市美原保健福祉総合センター | 072-363-9315 |
高槻市福祉事務所 | 072-674-7177 |
東大阪市東福祉事務所 | 072-988-6615 |
東大阪市中福祉事務所 | 072-960-9270 |
東大阪市西福祉事務所 | 06-6784-7866 |
豊中市福祉事務所 | 06-6858-2525 |
豊中市福祉事務所分室 | 06-6334-4055 |
枚方市福祉事務所 | 072-841-1221 |
八尾市福祉事務所 | 072-991-3881 |
寝屋川市福祉事務所 (池の里市民交流センター内) | 072-824-1181 |
吹田市福祉事務所 | 06-6384-1231 |
生活が苦しくなったときは、遠慮せずにお住まいの地域の福祉事務所に問い合わせてみましょう。
ただし、生活保護は、申請すれば誰でも受給できるわけではありません。厳密な審査があり、審査を通過した場合のみ受給が可能となります。
生活保護費を受け取る前に知っておきたい基礎知識
最低生活費から収入を引いた額が生活保護として受け取れる
生活保護では、最低生活費から収入を引いた金額が受給できるようになっています。
受給額の計算のベースとなるのが、最低生活費です。
生活費は人によって異なりますが、国は最低生活費の基準を定めています。
最低生活費は、以下の8つの扶助を合計して算出するのが原則です。
~最低生活費を定める8つの扶助~
・生活扶助(食費や光熱費など)
・住宅扶助(家賃・地代等)
・教育扶助(小学生・中学生など義務教育の教育費)
・介護扶助(居宅介護等にかかった介護費の平均月額)
・医療扶助(診療等にかかった医療費の平均月額)
・出産扶助(出産費用)
・生業扶助(高校生の教育費など就労のための技能習得費)
・葬祭扶助(葬祭費用)
これら8つの扶助をすべて合算し、収入では足りない分のみ生活保護として受給することができます。続いて、それぞれの扶助について見ていきましょう。
生活保護は「8つの扶助」で最低限の保障を揃えている
生活保護を申請すると、以下の「8つの扶助」が支給できます。
~8つの扶助の種類と内容~
生活を営む上での費用 | 扶助種類 | 支給内容 |
---|---|---|
日常生活に必要な費用 (食費・被服費・光熱費等) |
生活扶助 | 基準額は、 (1)食費等の個人的費用 (2)光熱水費等の世帯共通費用を合算して算出。 特定の世帯には加算がある(母子加算等) |
アパート等の家賃 | 住宅扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
義務教育を受けるために必要な学用品費 | 教育扶助 | 定められた基準額を支給 |
医療サービスの費用 | 医療扶助 | 費用は直接医療機関へ支払 (本人負担なし) |
介護サービスの費用 | 介護扶助 | 費用は直接介護事業者へ支払 (本人負担なし) |
出産費用 | 出産扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
就労に必要な技能の修得等にかかる費用 | 生業扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
葬祭費用 | 葬祭扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
出典元:厚生労働省公式サイト「生活保護制度」
8つの扶助は、大まかに日常生活に必要なこと、医療や健康に関すること、その他があります。
日常生活に必要な扶助は、「生活扶助」「住宅扶助」「教育扶助」です。
生活のベースとなる部分の補助が受けられますが、生活扶助は世帯によって加算があることもあります。
住宅扶助と教育扶助は定められた範囲内で基準額が支給されることになっています。
医療や健康に関連する扶助には、「医療扶助」「介護扶助」「出産扶助」があり、医療扶助と介護扶助では本人負担はありません。
出産扶助は、定められた範囲内で実費が支給されます。
そのほかの扶助は「生業扶助」「葬祭扶助」です。
生業扶助はこれから収入を得られるような技能を習得するための費用が支給されます。
葬祭扶助は葬儀にかかる費用であり、ともに定められた範囲内で実費が支給されます。
以上の8つの扶助の内容には、基準額が設けられているもの、範囲内での実費が支給されるもの等の違いがあります。
受給する前に確認しておくと安心ですね。
住んでいる地域や家族の人数・世帯構成に応じた加算
生活保護を算出するときには、家族構成によって違いがあるだけでなく、住んでいる場所によっても違いがあります。
住まいは地域ごとに「級地区分」が決められており、この区分によって「生活扶助基準額」が変わってきます。
級地区分は「1級地」「2級地」「3級地」に分かれており、それぞれの級地ごとに「1」と「2」の区分で分けられます。
先ほども述べましたが、この級地区分の差によって、生活保護の受給額となるのです。
- 「1級地-1」「1級地-2」
- 「2級地-1」「2級地-2」
- 「3級地-1」「3級地-2」
つまり、3つの級地×2つの区分=6つの「級地区分」があることになります。
~級地区分表~
級地区分 | 都道府県・市町村名 |
---|---|
1級地-1 | 埼玉県:川口市、さいたま市、東京都:23区、八王子市、立川市、武蔵野市、東村山市、国立市、他、神奈川県:横浜市、川崎市、藤沢市、他、愛知県:名古屋市、京都府:京都市、大阪府:大阪市、八尾市、東大阪市、他、兵庫県:神戸市、尼崎市、芦屋市、他、その他の地域 |
1級地-2 | 北海道:札幌市、江別市、宮城県:仙台市、埼玉県:所沢市、蕨市、他、千葉県:千葉市、市川市、他、東京都:青梅市、武蔵村山市、神奈川県:横須賀市、茅ヶ崎市、他、滋賀県:大津市、京都府:宇治市、他、大阪府:岸和田市、泉大津市、他、兵庫県:姫路市、明石市、岡山県:岡山市、倉敷市、広島県:広島市、福山市、福岡県:北九州市、福岡市、その他の地域 |
2級地-1 | 北海道:函館市、小樽市、他、千葉県:佐倉市、他、東京都:羽村市、他、静岡県:静岡市、浜松市、他、沖縄県:那覇市、他、その他の地域 |
2級地-2 | 茨城県:日立市、土浦市、他、栃木県:足利市、石川県:小松市、愛知県:瀬戸市、他、三重県:松阪市、桑名市、山口県:宇部市、他、その他の地域 |
3級地-1 | 青森県:弘前市、八戸市、他、秋田県:能代市、男鹿市、他、福島県:会津若松市、郡山市、他、千葉県:館山市、富津市、他、山梨県:富士吉田市、都留市、他、岡山県:津山市、他、鹿児島県:霧島市、他、その他の地域 |
3級地-2 | 上記以外の地域 |
出典元:厚生労働省公式サイト「生活保護制度における地域差等について」
先ほども述べましたが、この級地区分の差によって、生活保護の受給額となるのです。
なお、冬季には地区別に冬季加算も行われます。
自分の地域はどの「級地区分」になるのか、確認しておくようにしましょう。
出典元:厚生労働省公式サイト「級地区分」
生活保護の支給日はいつ?どのように支払われる?
生活保護の支給日はいつなのでしょうか? また、どのように支払われるのでしょうか?
生活保護を申請すると、審査を経て14日以内に受給の可否が郵送で届きます。
生活保護費は基本的に毎月、金融機関の口座へ振り込まれます。
なお、福祉事務所の窓口で手渡し、入院や入所している施設への送金という形でも受け取れます。
支給日は担当する福祉事務所によって違います。
例えば北海道富良野市のケースをもとに解説します。
富良野市のケースでは毎月1日が支給日となっていますが、どの地域でも、おおむね月初めの1~5日のいずれかに支給日されることが多いようです。
支給日が土日祝日にあたる場合(富良野市では金曜日も含む)には、支給日が土日祝日の前営業日にあたる金融機関の口座に振り込まれます。
出典元:富良野市公式サイト「生活保護のしおり」
生活保護の申請が認められるとさまざまな支払いが免除になる
生活保護を申請すると、「8つの扶助」を受給できますが、さまざまな支払いが免除となります。
- 国民年金保険料の免除
- NHK受信料の免除
自治体によっては、水道料金の基本料金の免除、地方税の免除、粗大ごみなどの利用料なども免除されることがあります。
なお、子どもがいる家庭で、保護者の同意がある場合には、保護者に代わって給食費を学校長に送付し、学校長が給食費を支払う「代理納付」も利用できる自治体もあります。
もちろん代理納付を選択しないという選択も可能ですが、この場合は保護者が支払うことになります。
ただしすべての受給者が免除されるわけではありませんし、自治体によっても違いがあります。
生活保護を申請するときには、自分の住んでいる自治体ではどのような扶助の種類があるのか確認しておき、扶助の受け取りの漏れがないよう、メリットを享受できるようにしたいものです。
【世帯別】生活保護の受給額はいくらもらえるの?
気になるのが「実際どれくらいの生活保護費を受給できるのか」という点でしょう。
生活保護の受給額はさまざまな要素によって決定されるので、一人ひとり異なります。
これから詳しく説明しますので、自分がどれくらいの受給額になるか調べてみましょう。
世帯別生活保護費受給金額の目安
高齢者の一人暮らし単身世帯の受給金額目安
高齢者の一人暮らしの場合、働けない人、年金だけで生活できない人、頼れる親族がいない人、預貯金などの資産がない人などは、生活保護の対象になる可能性があります。
受給できる金額は住んでいる自治体や個々の事情によって異なりますが、たとえば以下の金額が目安です。
大阪市(1級地-1)在住、一人暮らし(単身)、70歳の場合
生活扶助 | 約75,000円 |
---|---|
住宅扶助 | 約40,000円 |
合計 | 約115,000円 |
北海道札幌市(1級地-2)在住、一人暮らし(単身)、76歳の場合
生活扶助 | 約69,000円 |
---|---|
住宅扶助 | 約36,000円 |
合計 | 約105,000円 |
出典:札幌市「生活保護法による保護の基準表(令和5年10月~)」
なお、札幌市では10月~4月までの期間は「冬季加算」が計上されるため、受給額が増えます(1人暮らしの場合は12,780円が加算)。
上記のほか、医療機関や介護サービスを自己負担なしで利用できる扶助などもあります。
世帯分離とは
生活保護は、対象になるかの判断などを「世帯」を基準に行っています。ただ例外的に、1世帯を複数に分けたうえでそれぞれの判断を行うことがあり、これを世帯分離と呼びます。
世帯分離によって「親子で同居しているけど、親だけ生活保護を受ける」といったことが可能になります。親の介護が原因で生活が苦しい場合などは、世帯分離して親を保護対象とすることで、介護費用の負担などを抑えられるかもしれません。
障害者・傷病者世帯の受給金額目安
障害者がいる世帯も、通常と同じように「働けない」「働いても収入が少ない」「障害年金や手当など他の制度による支援では足りない」といった状態であれば生活保護を受けられる可能性があります。
受給できる金額の目安は、以下のとおりです。
大阪市(1級地-1)在住、身体障害者3級、一人暮らし、40歳の場合
生活扶助 | 約76,000円 |
---|---|
加算額 | 約18,000円 |
住宅扶助 | 約40,000円 |
合計 | 約134,000円 |
北海道札幌市(1級地-2)在住、身体障害者1級、二人暮らし、ともに40歳の場合
生活扶助 | 約122,000円 |
---|---|
障害者加算 | 約27,000円 |
住宅扶助 | 約43,000円 |
合計 | 約192,000円 |
出典:札幌市「生活保護法による保護の基準表(令和5年10月~)」
障害者の場合は「障害者加算」として受給額が上乗せされます。前述のとおり、冬季加算や医療費・介護サービス費の扶助の対象にもなります。
なお、入院している場合や施設に入所している場合などは、金額が変わってくる場合があります。
障害者加算
障害者加算は、一定の程度以上の障害を持つ人を支援するための加算です。障害者加算の基準額は以下のとおりです。
1級地 | 2級地 | 3級地 | |
---|---|---|---|
身体障害者障害程度等級表1・2級に該当する者等 | 26,810円 | 24,940円 | 23,060円 |
身体障害者障害程度等級表3級に該当する者等 | 17,870円 | 16,620円 | 15,380円 |
出典:厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和5年10月)」
実際の受給額は住んでいる自治体、年齢、家族構成、障害の重さなどさまざまな要因によって変動するため、正確な金額を知りたい場合は、福祉事務所や自治体の窓口などで確認するのが確実です。
母子家庭世帯の受給金額目安
母子家庭の場合、子どもの人数などに応じた加算があるため、通常より上乗せされた金額を受給できる可能性があります。
受給するための条件は通常同様、「働けない」「預貯金などの資産がない」「手当などの他の制度を活用しても生活が難しい」などです。
大阪市(1級地-1)、母子家庭、母30歳、子ども2人(4歳と2歳)の場合
生活扶助 | 約148,000円 |
---|---|
母子加算 | 約24,000円 |
児童養育加算 | 約20,000円 |
住宅扶助 | 約52,000円 |
合計 | 約244,000円 |
上記のほか、妊産婦の場合の加算や出産費用の扶助などもあります。もちろん、他の生活保護受給世帯同様、自己負担なしで医療を受けられます。
「母子加算」は、ひとり親世帯であれば母子家庭だけでなく父子家庭も対象になります。
なお、前述の障害者加算と母子加算は、原則としてどちらかしか受給できないというルールがあります。
母子加算
母子加算は、ひとり親世帯を支援するための加算です。母子加算の基準額は以下のとおりです。
1級地 | 2級地 | 3級地 | |
---|---|---|---|
児童1人の場合 | 18,800円 | 17,400円 | 16,100円 |
児童2人の場合 | 23,600円 | 21,800円 | 20,200円 |
3人以上の児童1人につき加える額 | 2,900円 | 2,700円 | 2,500円 |
出典:厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和5年10月)」
子どもの数が多いほど加算額が大きくなり、受給額が増えていきます。上記のほか、一定の条件を満たすとさらに経過的加算の対象になる場合があります。
児童養育加算
児童養育加算は、子ども(18歳になる日以後の最初の3月31日までの者)を養育している世帯を支援するための加算です。児童養育加算の基準額は以下のとおりです。
- 児童を養育する場合
児童1人につき10,190円
一定の条件を満たす場合、以下のとおり経過的加算の対象になります。
- 3人以下の世帯であって、3歳未満の児童が入院している等の場合
児童1人につき4,330円 - 4人以上の世帯であって、3歳未満の児童がいる場合
児童1人につき4,330円 - 第3子以降の「3歳から小学生修了前」の児童がいる場合
児童1人につき4,330円
生活保護の受給対象となる条件を解説
生活保護を受け取るための条件について詳しく見ていきましょう。大きく分けて次の6つです。
- 収入が厚生労働省の基準を下回っている
- 家族に働ける人がいるなら原則として生活保護は認められない
- 持ち家や車など活用できる資産を所有していない
- 働いて収入を得ることができない
- 国の制度を利用しても生活が難しい
- 親族などからの支援が受けられない
それぞれ解説します。
受給条件その1「収入が厚生労働省の基準を下回っている」
生活保護は、あくまでも最低限の生活を送るのが難しい人が利用できる権利です。そのため収入の要件が定められています。
基本的に、厚生労働大臣が定めた生活扶養基準より収入が下回っているかがポイントになります。
計算方法は地域や家族構成によっても違いがありますが、下記の項目を合算して算出します。
【A】生活扶助基準額(地域ごとに基準を設定)
【B】加算額(障がい者、母子家庭、児童を養育する場合)
【C】住宅扶助基準(実際に支払っている家賃・地代)
【D】教育扶助基準、高等学校等就学費(小学生~高校生の教育費)
【E】介護扶助基準(居宅介護等にかかった介護費の平均月額)
【F】医療扶助基準(診療等にかかった医療費の平均月額)
↓
【A】+【B】+【C】+【D】+【E】+【F】=最低生活費
※【A】~【F】の詳細に関しては参照をご覧ください。
これらの項目を合算して最低生活費を算出し、実際に得られている収入を比較します。
その結果、収入が最低生活費に満たないときには、最低生活費から収入を差し引いた差額が生活保護費として支給される仕組みです。
受給条件その2「家族に働ける人がいるなら原則として生活保護は認められない」
長期にわたり、うつ病などの精神疾患または身体障害を患っていたり、病気治療に専念していて働けない方は、生活保護の受給要件に該当する可能性があります。
なお生活保護では、働ける人は能力に応じて働くことが求められます。世帯の中で働ける人がいる場合や援助してくれる親族などがいる場合は、生活保護の受給要件を満たさない可能性があります。
あくまで「働けない」「働いても収入が少なくて生活できない」という世帯が生活保護の対象になります。
受給条件その3「持ち家や車など活用できる資産を所有していない」
生活保護の処分の対象となる資産は、主に以下のような金銭的に価値のある貴重品や贅沢品などが挙げられます。
原則、生活保護を受けるにあたって持ってはいけない資産であって、売却や活用が可能な資産がある場合は、その資産を生活に充てていただく必要があるのです。
- 不動産
保有は原則不可。ただし、居住中の自宅などは保有が認められる場合もあります。 - 生命保険(終身保険、養老保険、個人年金保険など)、学資保険
貯蓄性の高い保険は解約します。また、解約返戻金が一定額を超えるものは原則解約します。 - 貴金属(指輪・時計・ネックレス・ダイヤモンド等)・有価証券等債権
保有は不可。全額売却します。 - 自動車・バイク
原則として売却または処分します - 預貯金(種類・残高問わず)
生活保護申請時は、手持ちの現金(手持ち)と合わせて、最低生活費の2分の1まで収入認定を行いません。
ただし、生命保険や学資保険、自動車、バイク等については、その資産の利用状況や個別の事情により保有が認められる場合があります。
例えば自動車の場合、身体障害のある方の送迎に必要だったり、へき地での自動車移動が不可欠だったりしたときは、自動車の保有が認められる可能性があります。
「資産がどうしても必要」という場合は一度、ケースワーカーの方に相談してみましょう。
受給条件その4「働いて収入を得ることができない」
日本国憲法に定められている日本国民の三大義務は以下の3つです。
- 「教育の義務」(26条2項)
- 「勤労の義務」(27条1項)
- 「納税の義務」(30条)
その中でも深く生活保護と関連しているのが「勤労の義務」です。
病気やケガで働くことが難しい場合には、何が何でも働かなくてはならないというわけではありませんが、生活保護の要件では働くことが可能な人は「能力に応じて働くこと」を求めています。
では、能力に応じて働くということは、どのようなことなのでしょうか?
生活保護の要件の中での能力とは、ビジネススキル等ではありません。
たとえば子どもが小さいときには、働く時間が限られてしまいます。そのような人は、自分が働ける時間の範囲で働いてほしいということなのです。
なかには、働きたいけど雇用先が見つからないという人もいるかもしれませんし、働いてはいるものの、生活保護で定められている基準以下の収入しか得られないという人もいるでしょう。
生活保護は、収入があるから受けられないというものではありません。
働いても収入が基準に足りないときには、生活保護の対象となる可能性があります。
例えば、うつ病などの精神疾患または身体障害を患っていたり、病気治療に専念している方は生活保護の受給要件の対象となり得ます。
受給条件その5「国の制度を利用しても生活が難しい」
日本には生活保護のほかに、年金や各種手当などの給付を受けたり、公的融資制度を利用してお金を借りる方法もあります。
生活保護を検討する前に、まずはそれらの公的保障制度を活用することが必要です。
代表的なものとしては以下が挙げられます。
- 国民年金(障害基礎年金)
- 各種手当
- 医療費助成等
- 失業給付
- 緊急小口資金・総合支援資金 など
それまでの働き方や家族構成によって、利用できる公的制度は異なります。
受給の対象であるならば積極的に活用したいところですが、各種手当のお知らせは待っていても届きません。
生活が大変なときには、住まいのある自治体の窓口に出向いて、自分が活用できる公的な給付金や手当、融資制度はないかを相談してみましょう。
それでも生活が難しいときには、生活保護の申請を検討してみましょう。
主な公的融資制度
緊急小口資金 | 緊急かつ一時的な生計維持のための生活費としてお金を借りたい人 |
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生活福祉資金貸付制度 | 低所得世帯・高齢者世帯・障害者世帯 |
生活困窮者自立支援制度 | 最低限度の生活を維持できなくなるおそれのある人 |
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受給条件その6「親族などからの支援が受けられない」
生活保護では、制度を利用する前に親族等から援助を受けることを求めています。
「自分には援助してくれるような親族はいない」と思っている人もいるかもしれませんが、民法第877条では、扶養義務者が決められているのです。
その範囲は意外と広く、「直系血族(親・子)」および「兄弟姉妹」は、互いに扶養をする義務があるとしています。
さらに特別な事情があるときには、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることが可能です。
とはいえ親族との関係性にもよりますし、関係が良好であっても親族に援助するだけの余裕がなければ、援助を受けられないことになります。
そのような場合は、生活保護の対象となる可能性があるでしょう。
先に述べた1~6の受給要件を考慮し、世帯で得られる収入と厚生労働大臣の定める基準で計算された最低生活費の比較をします。
そのうえで収入が最低生活費に満たないときのみ、生活保護が適用されることになるのです。
生活保護の条件を満たすと受けられる保護
生活保護の審査に通過すると、さまざまな保護が受けられるようになります。そこで受けられる保護について、一つひとつ詳しく見ていきましょう。
世帯構成などの条件にあわせて生活保護費を受給できる
生活保護を申請して受理されると、毎月月初に、生活保護費を受給できます。
生活保護費は基本的な生活を送るための資金のみですので、あらかじめ食費、住居費、教育費、公共料金などに分けておき、それらの費用を確保しておくことが大切です。
入退院などでの医療費が無料になる
生活保護を申請し受理されると、病気やケガをしたときの治療に必要な費用を扶助してもらえます。
ただし現金で給付されるのではなく、医療費は全額現物支給となっています。
自己負担額がない代わりに、原則として指定された医療機関での受診となります。
介護保険制度の場合は、要介護認定で「要介護」または「要支援」の認定を受けている人が対象です。
介護保険を利用して介護サービスを受けるときには、通常では介護サービス費の1割の自己負担額が必要になりますが、この1割の負担額も不要になります。
出産や入進学などお金がかかるライフイベントは一時扶助が受けられる
生活保護費は毎月支給され、そのなかには最低生活費として必要なものが含まれています。
とはいえ、「出産や入進学でライフステージが変わった」「入退院などで新たな生活をする」といった場合には、手持ちの額では間に合わないこともあるでしょう。
そんなときには「一時扶助」として一定の品物の支給を受けられます。
一時扶助は幅広く対応しており、被服費として布団、被服、産着等が挙げられます。その他に入学準備金、家屋補修費等があります。
一時扶助を受給するには、領収書等が必要な場合もありますし、事前申請が必要であったり、上限額が決められていることもあります。
もちろん、決められた項目であっても一時扶助で受給できない場合もあります。
一時的に困っているなら、まずはお住まいの管轄する福祉事務所へ相談することが大切です。
生活保護を受けるにあたっての注意点
生活保護を受けるにあたっての注意点
- 年に数回ケースワーカーが自宅に訪れる
- 贅沢ができなくなる
- ローン・クレジットカードが組めなくなる
生活保護にはメリットがありますが、実際のところ生活保護にはデメリットや注意点があるので、ここで理解しておきたいところです。
ケースワーカーが自宅に訪れ、生活保護受給者の生活状況をチェックする
生活保護の注意点として挙げられるのは、年に数回(最初の1ヶ月程度は1回、あとは2~3ヶ月程度で1回の頻度で)ケースワーカーが自宅に訪れ、生活状況をチェックする訪問調査が行われる点です。
ケースワーカーとは、生活保護から自立支援に向かうための「良き相談相手」といえる役職の方です。
訪問調査といっても、家の中をくまなくチェックしてまわるというのではありません。
生活保護を申請した時点での生活状況や資産・収入の状況などの調査が行われ、生活保護を受給している今も状況に変わりはないのか、定期的にチェックするという趣旨で訪れています。
ここで注意しなければならないのが、ケースワーカーの対応です。
ケースワーカーが訪問調査をするときには、必ず応じましょう。
ケースワーカーから指定された日の対応が難しいようなら、いつなら大丈夫なのかを伝え、日程を調整してもらう必要があります。
仮に訪問調査に応じない場合には、生活保護そのものが打ち切られてしまう可能性がありますので、適切に対応できるようにしておきましょう。
生活保護の受給中は、毎月いくら収入・支出があったのか、申告する義務があります。
特にケースワーカーが訪問調査でチェックしているのは「無駄遣い」をしていないかです。
通信費や水道光熱費などが明らかに高いケースは少なくないので、その際に生活保護の受給者に対し費目の改善・見直しを図るよう、チェックします。
年金や仕送りしてもらったお金や給料はもちろんのこと、相続で財産を受け取ったときも収入となります。
もし嘘の申告をした場合は、生活保護の不正受給として、受け取った金額を返納しなければならないという事態になってしまいます。
自治体担当者からの取材こぼれ話
- 自治体の担当者に取材をしたところ、ギャンブルや浪費癖のため、受け取った生活保護をすぐに使い切ってしまう方が少なくないそうなので、その場合は1ヶ月に1回から、1週間に1回程度へと、生活保護費の受け取り間隔を短くしたりするケースもあります。
- さらに最近では、体調が悪く働けない高齢者の方が生活保護を申請・利用するケースが大幅に伸びているそうです。
贅沢ができなくなる
生活保護を受給すると、暮らしぶりは最低限度の生活を送ることになるため、贅沢ができなくなってしまうという話を聞いたことがあるかもしれませんね。
以前はエアコン(冷暖房機)は贅沢だから保有NGと言われていましたが、近年の気象状況を鑑みて、生活保護受給中であってもエアコンの設置は認められています。
贅沢品の概念は、時代にあわせて変わっているのです。
贅沢の基準は人によって違うものですが、これはあくまでも客観的に判断されます。
具体的には、ブランド品や高価な貴金属等は持つことはできません。
海外旅行をするときには、旅行へ行く前に、旅行先(宿泊先)、旅行目的、日程、費用、費用の準備方法等について、届出が必要になります。
旅行の目的が「遊び」である場合は、交通費と宿泊費に充当される金額は収入として計上されます。
ただし、親族の冠婚葬祭や危篤の場合やお墓参り、修学旅行、公的機関が主催する文化・スポーツ等の国際的な大会への参加へ選抜された、もしくは招待された場合には、おおむね2週間以内の期間で海外へ出かけるときには、旅行に要する費用の全額を収入として計上しないことができます。
ローン・クレジットカードが組めなくなる
生活保護を受給している場合、新たなローン・クレジットカードを組めません。
上記で説明したとおり、収入は毎月申告することが必要ですが、借り入れたお金も収入とみなされて、その月の収入として計上されてしまうのです。
なお、生活保護で受給したお金をローンやクレジットカードの返済に充てることは認められていません。
もし、ケースワーカーに無断でローンを組んでしまったときには、生活保護そのものが打ち切りになってしまう可能性があるのです。
生活保護を受けるための流れ・方法
生活保護の申請から受給まで、どのような手順で進められていくのでしょうか?
順を追って解説していきましょう。
1.生活保護の事前相談
生活保護を利用したい場合は、まずは、住所地を所轄する福祉事務所の生活保護担当、もしくは自治体の担当窓口に出向き、相談しましょう。
その際、生活保護制度の説明を受けるほかに、年金や各種手当、医療費助成など、他の自立支援の方法がないかも説明してくれます。
2.生活保護の申請・調査
生活保護の申請をすると、生活保護を決定するかどうかの以下のような調査が行われます。
・訪問面接
・生活歴の聞き取り
・資産・扶養等の調査
↓
生活保護の決定(開始または却下)
その調査は、先述の「受給要件1~6」になります。
具体的には、以下の調査が行われます。
- ・生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等)
- ・預貯金、保険、不動産等の資産調査
- ・扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査
- ・年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
- ・就労の可能性の調査
3.生活保護の決定
生活保護の調査が終わった後、審査を経て、14日程度で生活保護の受給の可否が郵送で届きます。
生活保護の開始が決定したら、はれて生活保護費が受給されることになります。
生活保護の支給日は、担当する福祉事務所によって違いがありますが、おおむね毎月、月初めの1~5日に支給されることが多いです。
なお、世帯の人数や年齢などによって決定する最低生活費と、世帯の収入(年金・手当・給与・仕送り等)と比べて、その収入が最低生活費より少ない場合は、その不足する部分が生活保護費として支給が決定されます。
生活保護の受給にあたっては、以下の点を特に留意しておきましょう。
- 毎月の収入の状況を申告しなければならない
- ケースワーカーによる、年に複数回の訪問調査が行われる
- 働ける可能性のある人(15歳~64歳まで健康状態にある就労できる人)には、就労に向けた助言や指導が行われる
生活保護の受給や財産の処分などに関するQ&A
-
A
親族への扶養照会は義務ではありません。事情によっては連絡なしで済ませることも可能です。
親族などに扶養してもらえる場合は生活保護の対象にならないため、自治体は原則として親族への確認(扶養照会)を行います。
ただ、長年にわたって絶縁状態で援助が期待できないときや、親族に居場所を知られたくない事情があるときなどは、不要と判断されることも。心配な場合は、福祉事務所で相談してみましょう。
-
A
一般的に資産とみなされるのは、預貯金、家、土地、建物などの不動産、自動車やバイク、一定の生命保険、貴金属や高価な服飾品やブランド品のバッグ等です。
基本的に、現金に換金できるものはすべて換金し、それでも足りないときには生活保護を申請するというのが決まりです。
ただし上記のものがすべて換金しなければならないわけではありません。
不動産は自宅以外に保有しているものは売却処分を求められますが、現在住んでいる不動産は保有が認められるケースがほとんどです。
自動車やバイクも、通勤に必要だったり、仕事で使うために保有しているときには、そのまま保有が認められるケースがあります。
意外と気づきにくいのが生命保険です。解約払戻金があるタイプの保険の場合は、お金に替えられるため、金融資産として扱われる可能性があるので注意してください。
もし、わからないことや不安・心配事があるなら、事前に相談しましょう。
-
A
公的年金と生活保護の両方から支給を受けることはできます。
ただし、公的年金の分は収入としてカウントされるため、生活保護から減額される注意点があります。
-
A
多くの自治体の地域では、おおむね月初めの1~5日のいずれかに生活保護支給日とすることが多いようです。
生活保護の支給日が土日祝日にあたる場合には、支給日が土日祝日の前営業日に金融機関に振り込まれるケースが多いです。
この記事のまとめ
生活保護を申請することは、国民の誰にも認められている権利のひとつです。
なかには恥ずかしい気持ちから生活保護の申請をためらう人もいるかもしれませんが、どうにも身動きが取れなくなる前に相談することが大切です。
とはいえ受給要件をクリアできなければ生活保護は受けられません。どのような要件があるのか、確認しておきましょう。
生活保護は最低限の生活を送るためだけでなく、生活を立て直すための手段でもあります。
前向きな人生を送るためにも正しく、有効に活用しましょう。
監修者
ばばえりFP事務所代表
関西学院大学商学部卒業後、銀行にてカードローンやクレジットカード、投資信託などの金融商品を扱う窓口営業部門に所属。 その後、保険業界や不動産業界での勤務を経て、独立。
【保有資格】AFP、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員1種、秘書検定1級、ビジネス実務マナー検定1級、メンタル心理カウンセラー、貸金業務取扱主任者資格試験 合格