警察からお金を借りる「公衆接遇弁償費」の利用条件や注意点|上限額は原則1000円
更新日:2024.04.26
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「出先で財布を無くしてしまった!交通費がなくて家に帰れない…」
「財布や定期券を入れたバッグをひったくられた」
そんな状況に陥って困ったら最寄りの交番で相談してみましょう。なぜなら「公衆接遇弁償費」という制度によってお金を借りられる可能性があるからです。
この記事では、意外と知られていない公衆接遇弁償費について詳しく解説します。
この記事を読んでわかること
- 外出中に何かのトラブルで帰りの交通費等がない場合は警察からお金を借りられる可能性がある
- 公衆接遇弁償費は警察官個人の善意で成り立っている
- 警察から借りられるお金の上限額は原則、警視庁(東京)では1,000円が目安
- 警察からお金を借り入れたが返済しない場合は詐欺罪で捕まる可能性あり
目次
- 1警察からお金を借りられる!?公衆接遇弁償費とは
- 1-1警察からお金を借りられる上限額は原則として500〜1000円程度
- 2実際に公衆接遇弁償費が使えるのはどんな場面?対象になる4つの状況
- 2-1どこで借りられる?導入していない都道府県もある
- 3警察でお金を借りる方法と借りるまでの流れ
- 3-1交番などで相談する
- 3-2お金を借りたい理由を警察官に説明する
- 3-3お金を借りるための書類に記入する
- 3-4返済書受け取り(返済について)
- 3-5財布を落とした人は遺失届を記入する
- 4警察でお金を借りるときの注意点
- 4-1返済しない場合は詐欺罪になる可能性も
- 4-2未成年者は親の同意がないと借りられない
- 4-3お金が借りられない場合もある
警察からお金を借りられる!?公衆接遇弁償費とは
外出中に財布を紛失したり盗まれたりして困っている場合、交番や警察署で帰りの交通費分程度の少額のお金を借りられる可能性があります。
警察官個人が善意でお金を貸し、それを警察が組織としてバックアップする仕組みになっています。
群馬県警の通達によると、この制度の趣旨は以下の通りです。
従来、地域警察官をはじめ警察官が勤務中に、公衆接遇上の必要から個人の所持金を支出したところ、これが返済されなかつたために損失を受けるという例があつたので、これを改善し、支出したものが返済されなかった場合には、一定の基準により公衆接遇費を支給して、これを報償することとしたものである。
困った人を思いやってポケットマネーを貸してあげる、そんな優しい警察官が損しないための制度なのです。
群馬県警では「地域警察官等公衆接遇費」と呼ばれていますが、警視庁(東京都)では、公衆(一般の方向け)の接遇(サービス)のために支出した費用をまかなうものとして「公衆接遇弁償費」と呼ばれています。名称やルールは都道府県ごとに異なります。
警察からお金を借りられる上限額は原則として500〜1000円程度
「交番でお金を借りられる」といっても、多額の費用や生活費を借りられるわけではありません。
その場所から帰宅するための交通費分などとして貸し出されるため少額で、東京(警視庁)では「1000円」以内、岩手県では「500円」以内が目安です。金額のルールは地域によって違います。
基本の金額は決まっていますが、「それだけでは足りない」「やむを得ない事情がある」といった場合は、警察署長や地域課長など主管者の判断で規定以上の金額を借りられることもあります。
出張先で財布を落としたときに自宅までの新幹線代を貸してもらえたケースもあるようです。時と場合によりますので、正直に事情を話して、どれくらい困っていていくら必要なのか説明するようにしましょう。
実際に公衆接遇弁償費が使えるのはどんな場面?対象になる4つの状況
警察でお金を借りられるのはどんな場合なのか、公衆接遇弁償費のルールを確認しておきましょう。警視庁の通達では、以下のように明示されています。
公衆に対する利便供与又は応急的な措置に要する経費として、次に掲げる場合に弁償費を支出することができる。
(1) 外出先で所持金を盗まれ、又は遺失した者に対する交通費
(2) 行方不明者等の保護にあたり、応急的な措置に要する経費
(3) 行路病人の保護又は交通事故等による負傷者の救護にあたり、一時的応急措置に要する経費
(4) その他公衆接遇の適正を期するため必要とする経費
主に考えられるのが、外出先で財布をなくしたり盗難に遭ったりして、現金やカードが手元になく交通手段がなくなった時です。
帰りの交通費程度ならこの「公衆接遇弁償費」でまかなえることになっています。
交通費のほか、家族に連絡するための電話代を融通してもらえるケースなどもあります。
「自分の今の状況でも借りられるのかな?」と不安に思うなら、ひとまず最寄りの交番などで相談してみましょう。
例に挙げられている状況以外でも、警察官やその上官の判断で貸してもらえることがあります。
どこで借りられる?導入していない都道府県もある
警視庁の通達によれば、お金を借りられるのは交番や警察署だけではありません。
警察署、企画課、運転免許試験場及び鉄道警察隊(以下「警察署等」という。)並びに交番、地区交番、駐在所、地域安全センター並びに鉄道警察隊分駐所及び連絡所(以下「交番等」という。)並びに警察署の警ら用無線自動車(以下「警ら用無線自動車」という。)においては、公衆に対する利便供与又は応急的な措置に要する経費として、次に掲げる場合に弁償費を支出することができる。
運転免許試験場のような警察関連の施設などでも、同様の仕組みが導入されています。
ただし先述の通り、「公衆接遇弁償費」は都道府県ごとに名称やルールが異なります。東京都(警視庁)のようにこの仕組みを導入するという正式な通達が公表されているところもあれば、そうではないところもあります。
<公衆接遇弁償費や類似の制度が導入されている都道府県>
- 岩手県
- 山梨県
- 石川県
- 東京都
- 群馬県
- 大阪府
- 京都府
- 熊本県
など
地域ごとにルールが違いますし個別の事情を人が判断しているため、場合によっては、困っている状況でもお金を貸してもらえないかもしれません。
さらに「公衆接遇弁償費」という制度の名前を出しても「?」という反応が返ってくるかもしれません。
ただし財布をなくしたり盗られたりした場合は、まず最寄りの交番に相談するのがベストという点は変わりません。
警察でお金を借りる方法と借りるまでの流れ
公衆接遇弁償費でお金を借りるには、どんな手順でどんな手続きが必要なのでしょうか。
基本的には、次のような流れで進んでいきます。
ステップ1.交番などで相談&事情を説明
ステップ2.必要な書類に記入&借りる
ステップ3.借りたお金を返す
一つひとつ見ていきましょう。
交番などで相談する
財布をなくしたり盗られたりしたことに気付いたら、最寄りの交番に相談しに行きましょう。交番が近くになくても、警察署や駐在所などでも対応してもらえます。
警視庁の通達によれば、公衆接遇弁償費は以下のようなところで認められています。
<警察署等>
- 警察署
- 企画課
- 運転免許試験場
- 鉄道警察隊
<交番等>
- 交番
- 地区交番
- 駐在所
- 地域安全センター
- 鉄道警察隊分駐所及び連絡所
<警ら用無線自動車>
- 警察署の警ら用無線自動車(パトカー)
警察関連のさまざまな施設等で対応しています。警察署や交番などでは財布をなくした人の対応に慣れている担当者も多く、必要な書類もすべて備え付けてありますのでスムーズに対応してもらえるでしょう。
ちなみに、各都道府県警は届いた拾得物をインターネット上で公開していて、誰でも確認できるようになっています。(警視庁の落とし物検索サイト)
どこかで落とした可能性がある場合は「落とし物検索」などのサイトで自分の物らしき情報がないか調べてみるのもひとつの方法です。
お金を借りたい理由を警察官に説明する
公衆接遇弁償費は、誰でもいくらでも借りられるわけではありません。
あくまで
「財布を落として手持ちのお金がゼロになり家に帰れない」
「バッグごと盗まれてお金もスマホもなくなって途方に暮れている」
など何らかの事情があって困っている人が対象です。
お金を自分で工面できる場合や家族や友人を頼れる場合なら、先にそちらを試すよう言われる可能性もあります。
今どんな状況になって何にどれくらい困っているのか、帰宅するにはいくらくらい必要なのか、正直にすべて説明しましょう。
当然ですが、ウソの説明をしてお金を借りることや、借りたお金をわざと返さないことは絶対にNGです。それは善意に甘えた「詐欺行為」になってしまいます。
緊急の事情ではなくお金が必要な方は、お金を借りる方法で他の選択肢も紹介しているので参考にしてください。お金を借りるための書類に記入する
お金の貸し借りがかんたんな口約束だけで決まると不安ですよね。
警察でお金を借りるときも原則、たとえ数百円程度の少ない金額でもきちんと借受願書(借用書)に記入する、返済書を受け取る、警察官がそれを記録簿に残すなど厳格な手続きが行われます。
借受願書には、たとえば以下のような内容を記入します。
- 日付
- 氏名
- 住所
- 生年月日
- 年齢
- 職業
- 電話番号
- 借りる金額
- 借りる理由
書類には押印するのが原則ですが、印鑑を持っていなくても指印で代用できますので問題ありません。
「返済書」や控えが発行されたら受け取って、お金を返し終わるまで紛失しないよう保管しておきましょう。
警察官はこのやりとりを記録に残し、報告書などを上官に提出することで、ポケットマネーから貸したお金の分を警察署から弁償してもらうのが「公衆接遇弁償費」の仕組みです。
返済書受け取り(返済について)
当たり前ですが、借りたお金は必ず返さなくてはなりません。無事に帰宅して現金を確保できたら、早めにお金を返しにいきましょう。
借りた時、お金と一緒に「返済書」を受け取っているはずです。返済書はお金を借りている証になりますので、それを持参して返しに行きます。
ただし都道府県警によっては「やむを得ない事情があるときは借用書などの証明書類を省くことができる」としているところもあります。
もし返済書をなくしてしまった場合は、お金を返しに行った時に事情を話してどうすればよいか相談しましょう。
返済は、借りた交番に直接現金を持っていくのが原則です。ただし旅行先や出張先で借りた場合など、その場まで行くのが難しい場合は、最寄りの交番で事情を話せばそこで返すことも可能です。
お金を返したら領収書を発行してもらうこともできます。借りたお金を返した証拠として、受け取ったら保管しておくとよいでしょう。
財布を落とした人は遺失届を記入する
財布をなくした、落とした、どこかに忘れた、といった場合はお金を借りるための書類だけでなく「遺失届(遺失届出書)」も記入して一緒に提出します。
これを提出しておけば、該当するものが警察に届けられたときに連絡してもらえます。
遺失届には以下のようなことを記入します。
- 何をなくしたのか
- 中に何が入っていたのか
- なくした人の住所・氏名・連絡先
- いつ頃なくしたか
- どの辺りでなくしたか
思い出せる限り、できるだけ具体的に詳しく書くのがポイントです。
ひったくりやスリに遭ったなど盗まれたことが明らかな場合は、遺失届ではなく盗難届(被害届)を提出することになります。
どの書類を記入すればいいのか迷ったら、担当の警察官に状況を話して判断してもらいましょう。それぞれの書類の書き方も教えてもらえるはずです。
警察でお金を借りるときの注意点
公衆接遇弁償費という仕組みは、基本的に警察官の善意によって成り立っています。ここからは、警察でお金を借りるにあたって知っておきたいことや注意点について見ていきましょう。おもなポイントは3つです。
- 借りたお金は必ず返す
- 未成年は親の同意が必要
- お金が借りられるとは限らない
ひとつずつ解説します。
返済しない場合は詐欺罪になる可能性も
お金を入手できたといっても、それは警察がお金を恵んでくれてたわけではありません。
あくまで一時的に借りているだけですので、そのお金で無事に帰宅できたらきちんと返しに行きましょう。
「たかが数百円」と踏み倒すのはNGです。せっかく善意で貸してくれているのに、恩をあだで返すことになります。
それだけでなく、返すつもりがないのに借りた、ウソをついてお金を借りたといった場合は、詐欺罪に問われる場合もあります。
実際、人の善意につけこんで少額のお金をだまし取るのは「寸借詐欺」という代表的な詐欺の手法として昔から存在し、逮捕者も出ています。
わざわざ借りた場所まで行かなくても、最寄りの交番などで返せます。お金が用意できたら忘れないうちに全額そろえて持っていきましょう。
なくした財布が出てこない場合でも、返済する必要があります。
未成年者は親の同意がないと借りられない
未成年がお金を借りるためには、基本的に親の同意が必要です。
民法でも、親の同意を得ずに自分の責任で自由にお金を借りる(ローン契約ができる)のは20歳以上(2022年4月以降は18歳以上)とされています。
また、都道府県の青少年保護育成条例などでは、まずは親権を持つ保護者がその子を適切に保護・監督するよう努めることが定められている場合もあります。
こうしたことから、未成年が警察に「財布を落として帰れない」と相談しに行ったら、親に連絡するよう言われるのが一般的でしょう。
ただし虐待を受けている、家庭環境が悪くて家出しているなど親に連絡しにくい事情がある場合は、事情をはっきりと伝えましょう。
お金が借りられない場合もある
公衆接遇弁償費は「借りられて当然」ではありません。
先述のとおり、交番などでお金を借りられるのはあくまで警察官個人の善意によるもので、地域によっては「公衆接遇弁償費」という仕組み自体がないところもあります。
警視庁(東京都)では「外出先で所持金を盗まれ、又は遺失した者に対する交通費」などを対象に含められることになっていますが、そのルールがいつでもどこでも適用されるわけではありません。
「公衆接遇弁償費」は警察官個人が自分で出したお金を、組織としての警察から補てんしてもらえる制度のことですので、社会福祉協議会などが行っている公的支援制度とは性質が違います。
困っているからといって確実に借りられるわけではありません。「貸してもらえたら善意に感謝」くらいの気持ちで相談するのが適切かもしれませんね。
この記事のまとめ
公衆接遇弁償費は、旅先などで財布を落とすといった「とても困った状況」の時に大変助かる仕組みです。
しかし必ず借りられるわけではなく、仕組みが導入されていない地域も存在します。
もし借りられることになったら、それは基本的に警察官の善意によるものです。しっかりと感謝を伝え、返済もキッチリと行うようにしましょう。
監修者
ばばえりFP事務所代表
関西学院大学商学部卒業後、銀行にてカードローンやクレジットカード、投資信託などの金融商品を扱う窓口営業部門に所属。 その後、保険業界や不動産業界での勤務を経て、独立。
【保有資格】AFP、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員1種、秘書検定1級、ビジネス実務マナー検定1級、メンタル心理カウンセラー、貸金業務取扱主任者資格試験 合格