公正証書とは?効力・作り方・費用を解説|証書のテンプレート見本付き

公正証書とは?効力・作り方・費用を解説|証書のテンプレート見本付き

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借金や遺言、離婚など、現在社会における法律上のトラブルは多様化・複雑化しています。

こうした法律上のトラブルを事前に防ぐ強力な手段に「公正証書」があります。

この記事では、公正証書とは何か、公正証書の効力・作り方・費用の相場について解説するとともに、公正証書の見本・テンプレートも紹介します。

公正証書の果たす役目は非常に強力です。

法律上のトラブルを事前に防止したい人は、公正証書の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

公正証書とは

  1. 公正証書は契約・法律関係について公証人が作成する証書である
  2. 公正証書には「証拠力」と「執行力」という強力な効力がある
  3. 公証人は法務局所属で、法律の専門家が務めている
  4. 公正証書を作成するには、目的の価額に応じた費用がかかる
  5. 公正証書の作成は当事者双方の公証役場への出頭から始まる

目次

公正証書とは公証人が作成する法律関係に関する証書

公正証書の謄本

例えば、世間話で「遺言は公正証書にしておくと安心だよ」という話を耳にしたことはありませんか?

なんだか固い響きを持つ「公正証書」ですが、そもそもどういった文書なのでしょうか?

まずは公正証書の意味について解説しましょう。

公正証書とは公証人が作成する法律関係に関する証書

一般的に公正証書とは、「公証人が作成する法律関係に関する証書」のことをいいます。

ここで注目したいのが、「公証人」と「法律関係」というキーワードです。

次からは、これらのキーワードをもとに公正証書の内容について詳しく解説していきしょう。

公正証書にできる主な3つの「法律行為」

印鑑

人どうしの「法律関係」を作り出すものはいろいろありますが、公正証書にできるのは、「法律行為」によって作り出された法律関係です。

法律行為とは、権利の発生や移転を目指して行う行為のことで、「意思表示」(自分の意思を外部に表すこと)が必ず含まれています

法律行為には、自分が意思表示を行うと同時に、相手からの意思表示を受け取るもの(契約)と、自分だけが意思表示を行うもの(単独行為)の2種類があります。

ここでは、公正証書にされることの多い、以下の3つの法律行為について紹介しましょう。

  1. お金の貸し借り(契約)
  2. 遺言(単独行為)
  3. 離婚に伴う養育費の取り決め(契約)

1.お金の貸し借り(借金)

お金の貸し借り(借金)は、「金銭消費貸借」という契約によって行われます(民法第587条、第587条の2)。

お金の貸し借りは、貸した(借りた)事実、貸した(借りた)金額、利息の取り決めなどについてトラブルになることが多いため、契約の内容を公正証書にしておけば、そうしたトラブルを防ぐことができるわけです。

2.遺言(公正証書遺言)

日本では高齢化に伴い、遺産相続が増えるのに比例して、相続トラブルも起きやすくなっています。

こうしたなかで相続トラブルを事前に防止するために、遺言を公正証書にする事例が増えています(民法第969条)。

自筆証書遺言(民法第968条)など、公正証書以外の遺言も可能ですが、こうした遺言は偽造(本人以外の者が勝手に作成すること)や変造(本人が作った物を書き換えること)が可能で、遺言をめぐってのトラブルに発展しがちです。

遺言を公正証書にしておけば、偽造や変造ができないため、遺言をめぐるトラブルを防ぐことができます

3.離婚に伴う養育費の取り決め

夫婦が離婚する場合、子どもの養育費の分担については、夫婦の協議で決めることとされています(民法第766条1項)。

一般的には母親が親権者となって子どもを引き取り、父親が母親に養育費を支払うよう取り決めるケースが多いです。

しかし中には、「そんな取り決めをした覚えがない」「お金の都合がつかない」などと言って、母親に養育費を支払おうとしない父親がいることも事実です。

こうした場合、養育費の取り決めを公正証書にしておけば、「そんな取り決めをした覚えがない」といった口実は通りません。

また、「お金の都合がつかない」と主張する父親に対しては、公正証書にしておけば、父親の給料や財産を差し押さえて、強制的に養育費を支払わせることもできるのです。

参照:民法(e-Gov法令検索)

【編集部独自取材】公正証書を作成した人から聞いてわかったこと

遠くを眺める女性

このたび、実際に公正証書を作成した人(30代・女性)に独自取材する機会を得ることができました。

公正証書の作成をしたときの気持ち、実際に体験してみて思ったこと等々、ありのままに語っていただきました。

私は夫と協議離婚することになり、一人いる子どもは私が引き取ることになりました。

ただ、養育費はどうするかが問題となりました。パートの私では養育費なしでは子どもと一緒に暮らしていけません。夫からもそのあたりの話になると、言葉をにごします。

夫から確実に養育費を毎月支払ってもらいたいと思っていたところ、「公正証書という方法があるよ」という友人からのアドバイスがあったので、さっそくネットで調べて、公正役場に連絡を取り、予約を入れました

公正役場の公証人の方はとても丁寧で、親身に対応してくださいました

公証人の方は私の話を聞きながらメモを取った後で、「次回に公証役場に来られるときは、夫の方と一緒にお越しいただき、公正証書を作成してはいかがでしょうか?」と言われました。

そこでその場で夫に電話連絡して事情を話したところ、子どものことはかわいいと思ってくれていたのでしょう、公正証書を作成することに賛成してくれたので、スケジュールを調整して、次回の予約を取りました。

そして約2ヶ月後、私と夫は公証役場に出向き、公正証書を作成して署名捺印までこぎつけることができました。

養育費は月額5万円で、子どもが20歳(または大学を卒業する)まで夫が支払うことで合意しました。

公正証書の作成にかかった費用は2万円程度で済みました。養育費が支払われる強力な「お守り」を得たことを考えると、この費用の金額は安いと思います。

もし私と同様のことで悩んでいる方がいらっしゃるなら、ぜひ一度、公証役場に行ってみて、公証人の方に相談してみることをおすすめします。

公正証書は証拠力と執行力の法的効力に強い

裁判所

前述のとおり、公正証書を作成することが「お金の貸し借り」「遺言」「離婚に伴う養育費の取り決め」についてのトラブル防止に役立つことが理解していただけたかと思います。

ではなぜ公正証書は、法律上におけるトラブル防止に役立つのでしょうか?

それは公正証書には以下の「2つの効力」があるからです。

  1. 裁判官の心証形成に影響する「証拠力」(形式的証拠力、実質的証拠力)
  2. 強制執行を行える「執行力」

それぞれの効力について詳しく見ていきましょう。

1.裁判官の心証形成に影響する「証拠力」

公正証書が持つ1つ目の効力は、「証拠力」です。

証拠力とは、事実関係の有無についての裁判官の確信を引き付ける力をいいます。

例えばお金の貸し借りの裁判にて、「AさんがBさんにお金を貸したか、貸してないか」が争われている場合、「AがBに金100万円を貸し付けた」と書かれた公正証書があれば、裁判官は「AさんはBさんに金100万円を貸し付けたことは間違いない」との確信に至るわけです。

ちなみに裁判の実務では、裁判官が事実関係の有無について確信に至ることを「心証が形成される」と呼んでいます。

公正証書の持つ証拠力は、さらに詳しくいえば、下記に述べる2つの証拠力によって形作られています。

真正に成立したことを証明する「形式的証拠力」

一つは、公正証書がその証書自体に名前が記載されている公証人によって作られたものであることについて裁判官の確信を引き付ける力のことです。これを「形式的証拠力」と呼びます。

例えば、「公証人Cさんの名前がある公正証書は、公証人Cさんが作ったものに間違いない」との確信を裁判官に抱かせることをいいます。

公正証書に「形式的証拠力」があることは、以下の民事訴訟法第228条から明らかです。

第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。

 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。

引用:民事訴訟法(e-Gov法令検索)

ちなみに、文書の作成名義人とされている人が作成したことに間違いがない文書を、「真正に成立した文書」といいます。

法律行為の成立を証明する「実質的証拠力」

もう一つは、公正証書に書かれた法律行為が成立したことについて裁判官の確信を引き付ける力をいいます。これを「実質的証拠力」と呼びます。

例えばお金の貸し借りにおいて、公正証書に「AさんがBさんに金100万円を貸し付けた」と書かれていれば、裁判官に対し「AさんはBさんに金100万円を貸し付けたことは間違いない」という確信を抱かせる力があるわけです。

2.強制執行を行える「執行力」

公正証書が持つ2つ目の効力は、「執行力」です。

執行力とは、公正証書をもとに強制執行を行える力をいいます。

例えば離婚における養育費において、父親が公正証書に書かれたとおりに養育費を支払わなければ、母親はこの公正証書をもとに裁判所に強制執行を申し立てて、父親の給料・財産を差し押さえて、養育費を強制的に取り立てることができるのです。

公正証書が執行力を持つには「執行証書」であることが必要

公正証書が「執行力」を持つには、公正証書の中に「債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述」が記載されていなければなりません(民事執行法第22条5号)。

第二十二条 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。

(略)

 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)

引用:民事執行法(e-Gov法令検索)

こうした陳述を「執行受諾文言」といい、執行受諾文言の書かれた公正証書を「執行証書」といいます。

養育費の例でいえば、公正証書の中に「債務者である父親は、養育費の支払いを3ヶ月分怠ったら、直ちに強制執行されてもかまいません」という執行受諾文言があれば、執行証書となるわけです。

母親は、公証役場で公正証書(=執行証書)の正本をもらい、執行文を付与してもらう(民事執行法第26条1項)などしたうえで、それを裁判所に提出すれば強制執行を始めることができます(民事執行法第25条)。

第二十五条 強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施する。ただし、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促により、これに表示された当事者に対し、又はその者のためにする強制執行は、その正本に基づいて実施する。

引用:民事執行法(e-Gov法令検索)

もし執行受諾文言(=執行証書)がない公正証書の場合は、母親は裁判を起こして、「被告(父親)は原告(母親)に養育料3ヶ月分を支払え」という判決をもらい、それを債務名義にすることで(民事執行法第22条1号)、やっと強制執行ができます。

執行証書には、上記のような面倒な手続きを省いて強制執行できるメリットがあるのです。

公正証書は自分で作成できる?結論、公証人にしか作成できない

公証役場

ここからは、公正証書において重要なキーワードとなる「公証人」について解説していきましょう。

公証人にとって最も重要な仕事は公正証書の作成です(公証人法第1条1項)。

公正証書の作成を担う公証人とは、どんな人なのでしょうか?

公証人の特徴を示すポイントは以下の2つです。

  1. 公証人は法務局所属の公務員である
  2. 公証人は公証役場で仕事をする

それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

参照:公証人法(e-Gov法令検索)

1.公証人は法務局所属の公務員である

公証人は、法務大臣により任命され(公証人法第11条)、法務局または地方法務居に所属する公務員です(公証人法第10条1項)。

法務省によれば、公証人は日本全国に約500人いると公表されています。

参照:公証制度について/第1 公証人と公証役場(法務省公式サイト)

公証人は法曹の中から任命される

公証人は、裁判官・検察官・弁護士の資格を持った人、つまり法曹の中から任命されるのが通常とされています(公証人法第12条、第13条)。

公正証書は、国民の権利義務に大きな影響を与える重要な文書です。

そのため、法律に関する知識や経験が豊かな法曹に公証人の仕事を委ねるのが、公正証書が正確かつ円滑に作成され、国民の権利を守ることにつながるのです。

一般の人や行政書士、弁護士は公正証書を作成できない

公正証書を作成できるのは公証人に限られています。

一般の人はもちろん、弁護士や行政書士といった法律専門職にある人であっても、公正証書を作成することはできません。

公証人が公正証書を作成する権限を持つことを定めた公証人法第1条1号では、次の2つの内容を含むと考えられています。

  1. 公証人は公正証書を作成することができる
  2. 公正証書を作成できるのは公証人だけである(業務独占)

上記の内容が含まれると考えられている以上、一般の人はもちろん、行政書士や弁護士などの法律専門職の人であっても公証人として任命されていない以上、公正証書を作成することはできないことになっているのです。

2.公証人は公証役場で仕事をする

公証人は、「公証役場」で仕事をしなくてはならないとされています(公証人法第18条)。

公証役場とは、法務大臣が設けた公証人が仕事を行う事務所のことで、法務省の発表によると全国に約300ヶ所あります。

参照:公証制度について/第1 公証人と公証役場(法務省公式サイト)

日本全国の公証役場の所在地や連絡先は、日本公証人連合会の公式サイトにて検索・閲覧ができます。

参照:公証役場一覧(日本公証人連合会公式サイト)

公正証書の作り方|作成までの6つのステップ

契約のサイン

ここまでは公正証書とは何か、公正証書にできる主な法律行為や、公正証書の効力について解説してきました。

次からは、公正証書の具体的な作り方について見ていきましょう。

公正証書の作り方の流れは、以下のとおりです。

  1. 当事者双方が公証役場へ出頭する
  2. 必要書類を提出する
  3. 陳述を聴き取って公正証書に記録する
  4. 公正証書の内容を読み聞かせ、または閲覧させて承認を得る
  5. 公証人と列席者が公正証書に署名捺印する
  6. 公正証書の原本は公証役場で20年間保管する

それぞれの流れについて、一つずつ詳しく見ていきましょう。

1.当事者双方が公証役場へ出頭する

公正証書の作成は、当事者双方(例えばお金の貸し借りでいえば、貸主と借主)が公証役場に出向く(=出頭する)ことから始まります。

公正証書を作成するには、公証人が当事者双方の陳述を聴き取らなければならないため、当事者双方がそろって出頭することが必要なのです。

なお、公証人は何件もの案件を抱えているため、突然行っても対応してくれません。

公証役場に行く際は事前に予約して、予約時間に遅れないように出頭しなければなりません

代理人による出頭も認められている

当事者本人が病気などその他の理由によりどうしても公証役場に行けない場合、代理人を立てて、代理人が公証役場に出頭することも認められています(公証人法第31条)。

代理人となれる人に特段の条件はなく、行政書士や弁護士といった法律専門職はもちろん、本人の事情をよく知っている家族や親族、知人などでも代理人となることが可能です。

2.必要書類を提出する

公証役場に到着したら、公証人に必要書類を提出します。

必要書類の種類や内容は、当事者本人が出頭する場合と代理人が出頭する場合とで異なります。

当事者本人が出頭する場合:印鑑証明書、本人確認書類

当事者本人が出頭する場合、出頭したのが当事者本人であることを確認できる書類を提出しなければなりません(公証人法第28条2項)。

提出書類としては、印鑑証明書や、運転免許証・マイナンバーカードなどの本人確認書類が挙げられます。

代理人を立てる場合:委任状、依頼人本人の印鑑証明書、代理人の本人確認書類

当事者の代理人が出頭する場合、次の書類が必要になります。

  • 当事者の代理人であることを証明する書類(公証人法第32条1項)
  • 出頭した人が代理人に間違いないことが確認できる書類(公証人法第28条2項)

当事者の代理人であることを証明する書類は「委任状」と呼ばれ、日本公証人連合会の公式サイトにてテンプレートが示されています。

公正証書の委任状のテンプレート

引用:公正証書の委任状のテンプレート(日本公証人連合会公式サイト)


出頭者が当事者の代理人に間違いないことを確認する書類については、当事者本人が出頭する場合と同じです。

陳述を聴き取って公正証書に記録する

出頭者が当事者本人またはその代理人に間違いないことが確認できたら、列席者の陳述を聴き取って、その内容を公正証書に記録します(公証人法第35条)。

ちなみに陳述聴取開始の後は、「出頭者」から「列席者」と呼ばれるようになります。

例えばお金の貸し借りでいえば、公証人は、Aさんの「〇年〇月〇日、Bさんに100万円を貸した。」、Bさんの「そのとおり間違いない。」という各陳述を聴き取ることで、公正証書に「〇年〇月〇日、AはBに金100万円を貸し付けた。」と記録することになります。

4.公正証書の内容を読み聞かせ、または閲覧させて承認を得る

公証人は、陳述をすべて聴き取って、公正証書に記録し終えたら、その内容を列席者に読み聞かせるか、あるいは公正証書に目を通させて、記載内容が列席者の陳述内容に間違いないかを確認します。

列席者は、記載内容が自分たちの陳述内容と同じであれば、公正証書を承認し、公証人は、列席者の承認を得たことを公正証書に記載します(公証人法第39条1項)。

5.公証人と列席者が署名捺印する

公証人と列席者が公正証書に署名捺印します(公証人法第39条3項)。

これで公正証書の完成です。

6.公正証書の原本は公証役場で20年間保管する

完成した公正証書の原本は、公証役場で20年間保管されます(公証人法施行規則第27条1号)。

参照:公証人法施行規則(e-Gov法令検索)

公正証書を手元に置いておきたい列席者は、公証人に対し、公正証書の謄本(原本の内容を全部書き写した、または複写した文書)の交付を請求できます(公証人法第51条、第52条)。

公正証書の作成費用の相場は目的の価額に応じて異なる

紙幣

さて、実際に公正証書を作成しようと思ったとき、どのくらいの費用がかかるのか、気になるところですよね。

まず、公正証書を作成する際にかかる費用は、次の2種類に分けられることを知っておきましょう。

公正証書を作成するための費用 作成そのものにかかる費用
印紙代にかかる費用

公正証書を作成するための費用は、公正証書にする法律行為や財産額によって大きく違ってきます。

例えば、遺言を公正証書にする費用の相場はおおよそ10万円~15万円ほどかかるとされています。

1.公正証書の作成そのものにかかる費用は主に3種類ある

公正証書の作成そのものにかかる費用については、主に下記の種類が挙げられます。

  • 公証人に支払う手数料
  • 債務名義の送達料金
  • 日当および旅費

公正証書の作成そのものにかかる費用についていくらかかるのか、一つずつ具体的に詳しく見ていきましょう。

公証人に支払う手数料:目的の価額に応じて金額が異なる

ここでいう公証人に支払う手数料とは、公証人が公正証書を作成する労力に対する報酬を意味します。

公証人に支払う手数料の金額は、契約や法律行為の目的の価額に応じて、次のように決まっています。

契約や法律行為の目的の価額
手数料
100万円以下
5,000円
100万円を超え200万円以下
7,000円
200万円を超え500万円以下
1万1,000円
500万円を超え1,000万円以下
1万7,000円
1,000万円を超え3,000万円以下
2万3,000円
3,000万円を超え5,000万円以下
2万9,000円
5,000万円を超え1億円以下
4万3,000円
1億円を超え3億円以下 4万3,000円に超過価額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5,000円に超過価額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額
10億円を超える 24万9,000円に超過価額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

参照:法律行為に係る証書作成の手数料(公証人手数料令第9条別表)(日本公証人連合会公式サイト)


例えば、300万円の金銭の貸し借りに関する公正証書を作成すると、1万1,000円の公証人の手数料がかかることになります。

債務名義の送達料金:1,400円かかる

債務名義の送達とは、強制執行を開始するにあたって、執行証書の正本または謄本を債務者に送達することをいいます(民事執行法第29条)。

「債務名義」とは、裁判所に強制執行を申し立てる資格を示す文書のことで、執行証書もその一つとされています(民事執行法第22条5号)。

「送達」とは、手続きに必要な書類を関係者に送り届けることをいい、「特別送達」という郵便で行われるのが一般的です。

執行証書の正本または謄本を債務者に送達するのは、債務者の義務を改めて認識させるとともに、強制執行の開始を予告するためです。

債務名義の送達料金は1,400円です(公証人手数料令第39条1項)。

参照:公証人手数料令(e-Gov法令検索)

日当および旅費:日当は1日につき2万円、旅費は交通費実費などがかかる

日当および旅費とは、公証人が公正証書を作成するために公証役場以外で仕事をした場合の、通常とは異なる労力への報酬(=日当)、および現場までの交通費・宿泊代(=旅費)をいいます。

例えば、公正証書の依頼人が病気や高齢のため、病院や介護施設に出張するような場合に、日当および旅費がかかります。

日当は1日につき2万円、4時間以内のときは1万円です(公証人手数料令第43条1号)。

旅費は交通費実費、および国家公務員に準ずる宿泊料とされています(公証人手数料令第43条2号)。

2.公正証書に貼る印紙代:契約金額によって印紙代の金額も異なる

公正証書を作成する際は、公正証書に貼る印紙代もかかります

公証人は、公正証書の依頼人に対し、印紙税法に定められた収入印紙を公正証書に貼らせなければなりません(公証人法第43条)。

収入印紙を貼る公正証書としては、お金の貸し借り、土地・建物の売買・賃貸借などが主な事例として挙げられます。

印紙代の金額は契約金額によって異なってきます。

例えば、300万円のお金の貸し借りについて記載した公正証書には、2,000円を支払って収入印紙を貼ることになります。

参照:第1号文書から第4号文書までの印紙税額の一覧表(国税庁公式サイト)

公正証書の3種類のテンプレート・見本(ダウンロード可能)

公正証書

ここからは、実際の公正証書のテンプレート・見本を紹介しましょう。

とりわけ公正証書を作成するケースが多い、「お金の貸し借り(借金)」「遺言(公正証書遺言)」「離婚に伴う養育費」について取り決めた公正証書の実例を見ていきましょう。

1. お金の貸し借り(借金)に関する公正証書の見本

まずは、お金の貸し借り(借金)に関する公正証書の見本を紹介しましょう。

お金の貸し借りの公正証書1 お金の貸し借りの公正証書2 お金の貸し借りの公正証書3

お金の貸し借りに関する公正証書のテンプレートはPDFの書類をご活用ください。

なお、お金の貸し借りについて「公正証書にするまでではないけれど、借用書としては残しておきたい」という人もいるかもしれません。

そんな人はぜひ「借用書の書き方とテンプレートの実例|効力が無効にならない方法も紹介」をご参照ください。

2.遺言(公正証書遺言)の見本

次は、公正証書遺言の見本を紹介します。

公正証書遺言1 公正証書遺言2 公正証書遺言3

公正証書遺言のテンプレートはPDFの書類をご活用ください。

なお、公正証書遺言は他の公正証書とは異なり、証人が二人以上の立ち合いが必要など、以下の方式にもとづいて作成しなければならないことが、民法第969条で定められています。

第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる
 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

引用:民法(e-Gov法令検索)

3. 離婚に伴う養育費に関する公正証書の見本

最後に、離婚に伴う養育費の支払いに関する公正証書の見本を紹介します。

養育費の公正証書1 養育費の公正証書2

離婚および養育費に関する公正証書のテンプレートはPDFの書類をご活用ください。

この記事のまとめ

以上の解説で、公正証書に関するイメージをつかんでいただけましたでしょうか。

多少のお金はかかりますが、公正証書は法律関係をめぐるトラブル防止や、相手が合意を守らないときの速やかな強制執行に役立ちます

法律上のトラブルは、事後の解決より事前の予防に勝るものはありません。

公正証書はまさに打ってつけの事前の予防策といえるでしょう。

公正証書で法律における解決を試みたいと思ったら、まずは最寄りの公証役場に相談してみることをおすすめします。

参照:公証役場一覧(日本公証人連合会公式サイト)

監修者 監修者

古畑 元樹

行政書士有資格者

古畑 元樹

大学法学部を卒業後、裁判所に入職。裁判所書記官として、民事系事件を担当。裁判所退職後、行政書士試験に合格し、有資格者となる。 現在は「法令を根拠とした仕事」をモットーにケアマネジャーの業務に当たる一方、Webライターとして民事系の法律問題をテーマとする記事を執筆している。 法律記事の執筆では、条文と判例に重きを置いて内容の正確さを期すとともに、やわらかくわかりやすい表現を用いることで、ユーザーにとって読みやすく役に立つ記事になることを心がけている。
【保有資格】
行政書士日本語検定準1級介護支援専門員(ケアマネージャー)介護福祉士